「カールじいさんの空飛ぶ家」 こんな映画を観た12

※若干ネタバレあります。

ストーリーは単純。と思いきや


 トイ・ストーリーシリーズ、ファインディングニモモンスターズ・インクピクサー社の製作の長編アニメーション映画。

 主人公のカールじいさん(78歳)は幼なじみの妻エリーに先立たれ、住んでいた家も周囲の開発に伴い、立ち退かねばならない状況に。

 そこで大量の風船を家にくくりつけて、エリーといつか訪れてみたかった場所、パラダイスフォールへと旅立つ。

 エリーとの思い出の地、約束の地、パラダイスフォール(ベネズエラのチケットが見えたから、南米?イグアスの滝?)へ風船で家を飛ばして、そこにたどり着いてよかったね~なほのぼの映画かと思ったらさにあらず、映画の本編はそこから始まる。

手に汗握るアドベンチャー

 一人ぼっちで目的地へと思いきや、いろんな仲間が増えていく。それこそ「桃太郎」的な家来を従え、珍道中になって、観客(特に子どもの観客)を飽きさせない。

 前半で振った前フリがちゃんと後半で生かされ、中盤で振ったフリもラストで生かされている。アクション的部分は仲間が助けてくれて、アニメとはいえ、老人では出せないスピード感や、アクションを担ってくれている。

 こどもの頃のカールとエリーの出会いから、エリーが亡くなるまでを一気にたったの数分で、しかも二人の結婚後はセリフなしで観客に理解させるのが見事。一緒に仲良く掃除する場面や、ピクニックに行く場面。そして子どもが授からなく、悲しみに打ちひしがれる場面まで、その導入だけで感動した。

 エンドロールでも、とても幸せそうなその後がちゃんと描かれており、カールじいさんが冒険のあと、どいういう道を歩んだのかがわかる。

細かい気配りと

 原題は「UP」。   「空へ。」って感じか。 そのままだったら何のことかそうぞうできない映画タイトルになるけど、「カールじいさんの空飛ぶ家」というタイトルになったとたん、「何だそれ?」とイッキに興味が湧いてくる。どうも、欧米の映画のタイトルってシンプル過ぎる気もするが・・・。

 吹替え版で見たのだが、劇中に出てくる「冒険ブック(正式名称忘れた・・・)」の表紙が字幕でごまかさず、日本語化されてたのに驚いた。ちゃんとそこまで配慮されてるのがすごい。(ピクサー映画あんまり観ないんだけど、他もそうなのか?)途中出てくる犬たちもワンワンではなく、バウリンガル的装置をつけて、ちゃんと言葉を喋って擬人化キャラにしてしまうのもムリヤリ感があるが、まあ、ピクサー映画って魚や車やおもちゃが喋るくらいだから、あんまり深いこと考えずに楽しめる。

 映画が始まる前に、同時上映の5分程のショートフィルム「晴れ ときどき くもり」が流れる。短いながらもとてもすばらしい。何ならこの短編でもう1本長編作れそうな内容の良さ。

 これを小さな子が観てどう思うのか、自分にはまったくわからないが、一緒に観に行った大人だって十分どころか、かなり楽しめ、しかも深い感動が得られる作品だ。しかも何かの原作があるわけでなく、オリジナルのアイデアの作品。老人を主人公にしてこういう作品を作ってしまうアイデアがあるなんてほんとにすごい。

 内容がよくてアニメーションの部分を語るのを忘れそうになったが、もちろん風船の表現や、パラダイスフォールの風景、キャラたちの表情などもすんばらしい。

2009年の映画。