「ハート・ロッカー」 こんな映画を見た:14

The rush of battle is often a potent and lethal addiction, for war is a drug
戦闘での高揚感はときに激しい中毒になる。
 
war is drug
戦争は麻薬である。

 こんな言葉で始まる。
 舞台は2004年夏、イラクのバグダット郊外。

 家に帰ってきてから調べたが、予備知識として。
 前年2003年の年末にサダム・フセインが逮捕され、一応イラク戦争としては終結したが、まだまだイラク国内の平和への道は遠く、抵抗勢力も多くおり、内戦状態にある。日本人民間人も被害にあった。

 その中で淡々と任務をこなす爆発物処理班の戦場での日常を描いた映画。

 

 主人公は、主に爆発物を処理するブラボー中隊のジェイムズ2等軍曹と、それをサポートするサンボーン軍曹とエルドリッジ技術兵。

  物語は、前任者が爆弾を処理中に死亡してしまい、代わりにジェイムズが赴任してくるところから始まる。ジェイムズは今まで800個以上爆弾を処理したつわもの。味方の制止を無視して、常識外れなやりかたで爆弾を次々処理していく。無敵のヒーローとして描かれるのかと思いきや、現地住民のなついていた子供の事件に心を乱され、仲間の負傷に苦悩し、国で待っている妻と子供に電話するも、感情が高ぶってうまく話すことができず、電話を切ってしまう。 冒頭の言葉のようにその「戦争」という麻薬の高揚感による「狂気」と、家族の待っている平凡な「日常」を行ったり来たりする感じ。たぶんこれが「戦争」というものなんだろう。

 主人公が爆発物処理班なので、いつどこで爆発が起きるかわからない緊張感、冒頭の爆弾処理自走ロボットが走り抜けるシーンから、爆弾処理を遠目で眺めている住民が敵なのかただの住民なのか判断つかない緊張感。砂漠での敵襲と、そしてまた爆発物の処理と、その重苦しい緊張感がずっと続き、 映画が終わる頃には軽くぐったりした。これが戦場なのか。 
きっと世界中で評価された部分はここなのだろうかと思う。

 この映画観て楽しかったですか?と聞かれたら「いや・・・その・・・」と答えそうな映画。つまらないというのではなく、この映画はエンタテイメント性よりも、戦場のリアル感を追求してるのだと思う。スカッとしたいなら別の映画を観てください。感動したいなら別の映画を観てください。て感じ。もちろんこの映画を観てスカッとする人もいるだろうし、感動する人もいるだろう。今年のアカデミー賞を6部門、各国の映画賞を100個以上も獲得しているだけあって見ごたえは満点。でも感覚は人それぞれだけど。

 ずっと手持ちカメラの映像だったのだが、臨場感があってよいのだが、若干ブレ具合がキツすぎて、酔いそうになった。

 監督はキャスリーン・ビグロー。「アバター」のジェームズ・キャメロン監督の「元」奥さん。女性なのに、ものすごい骨太で男前な映画を作る監督。そして主人公たち3人はほぼ無名の俳優だが、何人か大物もチラっと出演。自分が判別できたのは、前半に出てきたデイヴィット・モース(グリーンマイルダンサー・イン・ザ・ダーク等の丸顔の名脇役?の人)だけだった。 あとは、ガイ・ピアーズ(LAコンフィデンシャル)、レイフ・ファインズ(ハリポタの悪役、ヴォルデモート役)など。 主人公たち俳優が無名なので、ストーリーにのめり込める。

 ラストシーンも印象的。そしてネタバレになってしまうので書けないが、ラストシーンのひとつ手前のシークエンスも、普通なのだが、それがかえって際立つシーン。
 
2010年の映画。