「第9地区」 こんな映画を観た:15

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全体としては
ドキュメンタリー風SF?


 今から28年前、南アフリカ共和国ヨハネスブルグの上空に、巨大宇宙船が飛来し停泊する。ところがウンともスンとも言わないので軍隊が乗り込んでみると、中には弱っている宇宙人が多数。

 なので宇宙船から救出し、「第9地区」というところ(=スラム街)に収容し、住まわせることにする。エイリアンと言っても、メチャクチャ強いわけでもなく、ずば抜けて頭がいいわけでもない。科学力はすごいが、宇宙船が動かないのでとても大人しい。見た目は「エビ」の顔と手であとは人間と似たようなかたち。全身うろこに覆われている。若干キモイ。何でも食べるけど、好物は「猫缶」(笑)

 そしてその巨大宇宙船が上空に止まったまま現代に至る。エイリアン(通称「エビ」)たちはどんどん増え続け、「第9地区」にも収まり切らない状態に。人間たちとの争いも絶えない。

 そこでさらにドイヒーな別の場所に居住区を移そうとするために、その地区の管理会社の責任者に主人公のヴィカスが任命されたあたりからストーリーは始まる。 

 どうみても「人種差別」をそのエイリアンたちに重ねてしまう(虐待に近いことをされていたり、無理矢理地球人の名前をつけられていたり。)し、それを狙っているだろうの映画。でもアカデミー賞をなんと作品賞にノミネートされているので、(他3部門も!受賞は逃しましたが)実力は折り紙つき。製作にロード・オブ・ザ・リングピーター・ジャクソンも加わっているので、無名監督ながら、あなどれません。

 エイリアンVS人間ではあるのだが、「アパルトヘイト(人種隔離政策)」の南アフリカが舞台だからそこはかとなく社会派な匂いがする。全体としてこのストーリーをドキュメンタリー風になっており、ただド派手なVFXを使うだけでなく、なんとなくシリアスに仕上げられている。エイリアンを「難民」にしてしまうなんて。ほんとアイデアって大事だなぁ~と思う。

 前フリは長くなく、多少の舞台説明があったあたりからいきなり本題に入ってしまうので、ネタバレ部分がかなり多くなってしまうので、ようつべで予告編を挟んで、後半はネタバレ気味で書きます。  ようつべの予告編はネタバレなしです。

 いちおうラストは伏せますが、ネタバレは困る!という人はここで見るのをおやめください。すいません。





 

 突然一転してチェイスムービーに。

 で、ヴィカス(主人公)はあるエイリアンの家を訪問した際に、なぞの棒状の物体を手にし、そこから噴射された液体を浴びてしまう。それによってその後、徐々にエイリアン化してしまうヴィカス。ただそれだけだったらよかったのだが、エイリアンから押収した強力な武器たちは、エイリアンしか扱えない。よって半人間半エイリアンのヴィカスも扱えるようになる。そのヴィカスの身体を利用としようと、ヴィカスを雇っていた会社がヴィカスを殺そうとするが、辛くも脱出する。
 
 半エイリアンとして第9地区に戻ったエイリアンは先の「棒」を持っていたエイリアン(名前:ジョンソン(笑))にかくまってもらう。ジョンソンによると、「棒」は宇宙船を動かすために必要なもの。宇宙船に行けばヴィカスも助けられるという。なのでまたヴィカスが捕らえられていた施設に「棒」を取り返しに、ジョンソンと一緒にまたその施設に乗り込む。

 後半はチェイスムービーに一変し、エイリアンの強力な武器を片手にヴィカスが元味方だった人間たちをなぎ倒していく。 その強力な武器が痛快。 また、後半にヴィカスが乗り込むロボの外観も見事だし、操作画面もセンスがいい。エイリアン側の船の操作ディスプレイもアバターに負けないくらいVFXバリバリだし。観てて気持ちがいい。なんだかB級っぽいなと思いきや、わざとB級っぽくしたようなキラリと光るいい映画。

 ヴィカスが虐げようとしたエイリアンたちはいつしか仲間になり虐げられる側に立つことに。ヴィカスは自分が元に戻りたい一心でエイリアンたちと一緒に人間と戦うことになる。途中、ヴィカスが「猫缶」をおいしそうに食べて、「猫缶」をすんなり食べられるようになってしまった自分にキレるヴィカスが悲しい。だんだん後半はキモいエイリアンたちも「がんばれ!」と応援したくなってしまう。ジョンソン親子の親子愛も泣ける。エビエイリアンの顔なのに(笑)

 ラストにヴィカスの妻に届けられる贈り物もとても心を打つ。

 2010年の映画。(アメリカ公開は2009年)