「ノルウェイの森」 こんな映画を観た:25
私も大好きな作家、村上春樹さんの大ベストセラー作品の映画化。ファンとしてはついにきたか。という感じです。
これが原作です。装丁の色がアレですが、クリスマス要素は「ゼロ」です。
きっと今までもいろんな作品の映画化を打診されていたでしょうが、おそらくファンのかたがた、いわゆるハルキストのみなさんが一番映画化して欲しい、もしくは思い入れが強くて、一番映画化して欲しくない作品が映画化されました。
こっちは映画のパンフ。レコードジャケットのような装丁がGOOD。
で、肝心の感想は・・・。
村上さんがOKを出し、脚本に関して監督とやりとりを行っている以上、これ以上の映画「ノルウェイの森」はきっとないでしょう。何だか不満がありそうな書き出しですが、別に不満があるわけではありません。
もちろん私も原作は読んでしまっているので、原作との違いがないわけではないんですが、それでもとてもいい作品ではあると思います。
監督が外人さんなので、どうなってしまうんだろう?とは思いましたが、これほど異文化を理解してくれるとは思いませんでした。作品全体は60年代テイストでばっちりキマッテいて、まあ、自分はその時代を知っているわけではないんですが、とても・・・耽美的というか独特な時代をうまく醸しだしていたと思います。
そして前半の直子とワタナベの散歩のシーン、そしてちょくちょく出てくる阿美寮の草原はとても美しく、四季によっていろいろと景色を変える情景がよい。カメラワークがまたすごい印象的。被写体めがけてよく動くというかなんと言うか。
上下巻もある本を2時間にまとめるのはなかなか難しいようで、レイコさんのくだりや、緑の父親のくだりや突撃隊のくだりもバッサリ切り落とされていて、原作を読んでない人には、特にレイコさんのくだりが???だと思うのがどう映ったか・・・。
一番印象的だったのは、ワタナベと永沢さんとハツミさんの会食のシーン。3人での高級レストランでの永沢さんの合格祝いの食事会、和やかに進むはずなのに、永沢さんの発言により、ハツミさんが徐々に、怒りの表情に変わっていくさまにハツミさん役の女優さんの凄味を感じました。
自分が原作を読んだのは10年以上前、当時読んだ時に感じた、世間とは何となくズれた感覚の世界観。それがその読んだ当時はひしひしと感じることができて、自分はちゃんと世の中で生きていけるのかどうか不安になりました。
自分が社会人になり、働くようになってからはそのズれた感覚もなくなってきて、最近原作を読み返してみましたが、ちゃんと自分が現世にいるような感じで、「こっち」側から読んでいますが、世間からズれた感覚、「あっち」側から読むことができた10年以上前。その若さの感じが今の自分にはうまく感じとれなかった。とれなくなってしまったと言えばいいのか。いいとかダメとかじゃなく。
その浮世離れ感が映画にうまく出ていたのかどうかはよくわからない。でも原作の中の「若さ」のテイストを突出させて映画化したようで、生きようとしたワタナベ、たまに出てくる肉体労働のシーン。生きるのをやめてしまった直子。が対比的。
結局、直子を取り戻すことができなかったワタナベ。人はどれだけ人を愛することができるんだろう。そんなことも思いました。
あとそれから、印象的な言葉が出てくるのが原作の特徴のひとつでしたが、
「死は生の対極としてではなく、その一部として存在する。」
が出てこなかった(ような気がする)のは残念です。
永沢さんの、自分の好きな言葉、
「自分に同情するな」「自分に同情するのは下劣な人間のやることだ」
は出てきていた。そんな言葉が吐けるくらい、自分に厳しい男になりたいです。永沢さんの行動はともかくとして。
俳優さんについていくつか。
この原作自体の登場人物がとてもキャラが立っていて、いろんな立場に自分を映すことができるんではないかと思う。それぞれの俳優さんがとてもがんばっていた。
直子役はキクチリンコさん。直子は後ろが透けて見えるんじゃないかってくらい、透明感のある女優さんにやって欲しかった。でも実際観てみると、これだけ難しい役をこなせる人が他にいなかったんではないかと思う。消去法ではないけれど。精神的に病んで、常軌と狂気の間を行ったり来たりしてる役はとても大変だったんではないかと感じる。
緑役は水原希子さん。モデルの人で、役者は初体験だったようですが、がんばってこなしていたと思います。
ハツミさん役は初音映莉子さん。ワタナベ、永沢さんとの食事会のシーンしかほぼ出ていませんでしたが、上でも書きましたが、その存在感がすごかった。昔、アイドルをやってたような気がしましたが、いつの間にか女優さんもやっていたのね。
またレイコさん役の霧島れいかさん含め、女優さんたちがとても印象的でした。
文庫サイズの映画のパンフ。本屋さんにあったりします。
主人公:ワタナベトオル役はマツケン君。自分の中では、ワタナベトオルのイメージは、まんま村上さんだったが、マツケン君という配役は、賛否両論あるで しょうが、今現在ではベストなのではと思う。イケメンだけど、ずば抜けたイケメンではなく、そして影のある役もこなせる。ワタナベ役にぴったりでした。抑揚のない、乾いたしゃべりかたはあえてそうしているらしい。パンフより。
永沢さん役はタマテツさん。永沢さんはイケメンというイメージだったので、とてもマッチしてる感じ。ずば抜けた知性とぶっ飛んだ感性の永沢さんをクールに演じていた。たたずまいだけで永沢さん感がバリバリ出ています。特にあの目線。
前売り券と、付録のポストカードで~す。
2010年の映画。