「100,000年後の安全」 こんな映画を観た:28

今、まさにタイムリーなドキュメンタリー映画

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 フィンランドのオルキルオト島では、原子力発電所から出される放射性廃棄物を地下に保管する施設が建設中。その放射性廃棄物半減期は10万年。つまり10万年経たないと無害にならない。なので10万年もそこに保管しなければならない。

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写真2 赤ピンの位置がオルキルオト島@フィンランド 島と言っても地続き

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 その施設の代表者と、専門家へのインタビューと、その建設中の施設「オンカロ」(フィンランド語で隠し場所の意)内の映像で構成された、まるでSFのような、できれば目を背けたいような、真実の話。

 あまり複雑な話は出ず、そのオンカロの運用と、後世の人類、もしくは人類ではない知的生命体への警告をどうするかに焦点があてられている。何万年も先の人たちにどうやってメッセージを伝えるのか。

 放射能のやっかいな所は、無味無臭、人間の五感では感知できない。なのに人体にはものすごく有害。そして無力化させる技術が確立されてないので、無力化させるのにものすごい時間がかかる。その代わりに莫大なエネルギーを得ることができる。そのエネルギーを最後まで制御する方法もうまく見つからないまま、今日に至っている現実。

 地中に埋めとくなんて…と思ったが、例えば海に沈めるのも海中でどうなるかわからんので難しい。ロケットで太陽に打ち込むのも途中でロケットが爆発するか もしれん。なので地中に埋めようということらしい。調べた所、今のところこの方法が一番安全な方法らしい。その世界で唯一の核廃棄物の最終処分場がここ。

 関係者にインタビューしているが、結局有効な答えは出ない。当たり前だ。そんな未来なんぞ誰も予測できるわけない。

 印象的な言葉は、オンカロが満タンになって閉鎖されたあと、その施設のことを「忘れるということを、忘れないでほしい」と言っていたこと。しかもその言葉が繰り返し出ていた気がする。

 たぶん何百年かは今の状態をキープできるかもしれない。でも戦争が起こったり、テロ組織がテロ活動のために放射性廃棄物を手に入れようと動くことだってあるかも知れん。そうなったら掘り起こされることだってあるだろう。ましては数万年先なんか人類が存続しているかどうかもアヤシイ。もうそう考えると、忘れ去られてしまえばいいというのもわかる気がする。「この先危険」なんて立て札があれば逆に興味を持ってしまうのが人ってもんだろう。

 そう考えると今ある原発は速やかに停止させ、それと同時に放射能を処理できる技術の開発を最優先、そして代替エネルギーの開発も急がねばならないだろう。今更文明を後退させるのも無理だろうし、人間の文明は行き着くとこまで行くしかないと私は思う。

 もう今や、原子力発電所は世界中で欠かすことのないエネルギー施設。そして、われわれ日本人の目の前にはフクシマ問題が横たわっている。とにかくこれ以上原発を運用するのはマズいのではないか。そして今ある施設も徐々に停止させなければ…とこの映画を観て思った。

 私を含めて今これを読んでる皆さんも、100年も生きれるかどうか。だからその後は知らん。という問題ではない。われわれの子のその子のその子の…世代にまで影響を及ぼす問題。

 映画としては結論も何も提示せず、これってこうなんだけど、どうなの?という疑問を観る人に投げかける。その投げかけるボールはこれまでになく重く、大きい。

 原題は「into eternity」…永遠の中へ。確かに10万年なんて本当に永遠だ。これほど後味の悪い映画を観たのは初めてだ。映画がだめというわけではなく、テーマが重すぎるから。でも地球上の人類全てが、少なくとも日本人全員が観て欲しい映画。

2011年の映画。