「リアル・スティール」 こんな映画を観た:43

 よくあるファーザー&サンの感動映画かな~?と思って観てましたがなかなかどうしてしっかりした作りになってます。

Bla113

 時代は近未来の2020年。格闘技は人間VS人間は飽きられ、この世界ではロボットVSロボットの格闘技が流行っている時代。ロボは人間がリモコンでリングサイドから操作する(自動操縦じゃないんだね)。主人公のチャーリーは元プロボクサーで今はそのロボットボクシングの世界に身を投じている。しかし成績は芳しくなく廃業寸前。そんな中、かつて別れた恋人との間に生まれ、その恋人と暮らしていた男の子:マックス(11歳)がその恋人の突然の死によってチャーリーの所へ身を寄せることになる。

 前半はいかに父親チャーリーがダメオヤジかを説く。冒頭のロボVS闘牛のシーンでも子どもから写真撮影をダシに小銭を稼ごうとしたり、ロボットボクシングのために親戚からマックスの親権をタテに金をせびり、またロボットボクシングに金をつぎ込もうとする始末。でもそのたびにヘマをしてチャーリーのロボはスクラップになってゆく。チャリー=ヒュー・ジャックマンウルヴァリン(Xメン)=荒くれ者的なイメージがチラリと滲みてているようないないような。

 マックスは骨のある子で、ことあるごとにチャーリーにかみつく。親子二人の間はなかなか進展せずだが、そんな中とあるスクラップ工場で偶然旧タイプのロボを見つけるマックス。チャーリーは見向きもしなかったが、マックスは自力で土に埋まっていたロボを掘り起こし、これで闘うんだ!とチャーリーに説く。その旧式のロボが実は今のロボにはない能力を秘めていて、それで快進撃が始まるという話。

 ロボットボクシングのシーンの高揚感はサイコー。BGMやカメラアングル、盛り上げ方はぞくぞくする。そしてロボの重量感がよく出ている。劇中では当たり前のように存在しているロボたちだが、実際はCG合成なので例えば最初の闘牛とのシーンは闘牛ごとCGなのか?とも思ったり、そして格闘シーンのパンチの重み、強さ、音なども秀逸。格闘シーンに合わせて自分もグーパンが出そうなほど(笑)ボクシング監修がかつての伝説のチャンピオン、シュガー・レイ・レナード氏ということもあり、ちゃんとしてる(と思う)・・・ロボだからってハチャメチャな格闘シーンでは無い気がした。親子もんの感動だけでなく、格闘技モノとしてもSF・CGモノとしてもしっかりした作り。

 また段階を追っていくストーリー、敵味方のわかりやすい表現、前半での教訓が後半で生きていたり、分かりやすい展開で観てて楽。

 全体として、マックス君役の子役のダコタ・ゴヨ君の演技が光っていた。吹替えで観たのでセリフどうのこうのはわからないが、ダンスのシーンやロボットとのコミュニケーションのシーン、敵をアジテードするシーンやら、ダコタ君がいたからこそこの映画はちゃんと成立したのではと思った。

 ラストの方の、チャーリーがいきいきしてるのをマックスとヒロインの女性が見て涙してるシーンがよかった。

・・・こっからはほぼ余談。

 この映画で印象的だったのがロボの世界観が日本へのオマージュでいっぱいだったこと。まずそれぞれのロボが全体的に肩幅の大きい鉄人28号的デザインで、ちゃんとデザインすればもっとカッコイイデザインになるはずなのに・・・あえてそうしてるように見える。

 そして途中チャーリーが手に入れるロボのボディには「超悪男子」のペインティング(笑)両腕の電光掲示板も「贖罪」とか「苦痛」とか「末期」表示されて(うろ覚え)、日本人サイドからみるとツッコミどころ満載のデザイン。

 そしてとある闘技場の入り口にはボディが明らかにファーストガンダムを模した巨大な像(顔以外はそっくり)が立っていたり、ラストの方でマックス君の着ていたTシャツにでっかくカタカナで「ロボット」と書いてあったりは笑えましたが、極めつけは主人公のロボの名前が「アトム」。これは日本人なら誰でも思い入れが深まるだろう。まるで日本向けに作られたネーミングセンス。

 そして音楽担当のかたがロックバンド出身のせいか、そっち寄りな選曲が自分にはうれしかった。Foo Fighters の「Miss The Misery」やEMINEM(・・・はラッパーだけど)の「Till I Collapse」など自分の知ってる曲もかかってたのがうれしい。そしてマックス君が最初に着ていたTシャツに「VAN HALEN WORLD WIDE TOUR」と書かれてあってなんだか感激。劇中にVANHALENの曲は流れなかったけど・・・。

 ツッコミ所も無いわけではない映画ですが(とあるロボが学習能力があって試合中も進化していくとかいう触れ込みがあったのにぜんぜんそうでもなかったりとか)、でも自分が好きな要素がたくさん出ていて満足。

2011年の映画。