「桐島、部活やめるってよ」 こんな映画を観た:67

「学校の階級社会と自分の限界」

Kirishima1

ざっくりストーリー

 とある高校が舞台。金曜日にバレー部の桐島が部活を辞めた。桐島は学内でも有名なスーパーエリートの男子生徒。その桐島が部活を辞めたことによって学校内の人間関係が微妙に狂いだす。

 「桐島、部活やめるってよ」と発したのはたぶん仲間の生徒たち。その言葉を使っている生徒たちが主役。タイトルが絶妙だなぁ~。

 ベストセラー小説の映画化。原作は読んでません。

感想

 この映画は結末がどうのこうのより(別に結末がわるいと言ってるわけではないけど)、その過程がとても見ごたえのある映画。

 学生時代から「階級」「格差」みたいなのものは決まっていて、運動部が上で文化部が下で、いわゆる「モテ」グループから「非モテ」グループまでそれらの人間関係を見事に描いてました。そういえば学生時代あったよね、見えないけれど、はっきりした格差。学生の「部活」って社会人でいう仕事みたいなもんだから、その人のステイタスを決めていると言っても過言ではない。今にして思えばいろいろあったな~。

 桐島が辞めた金曜日を何度も繰り返し、それぞれの学生の視点から物語を集約してゆく。あの時あいつはどう思っていたのか。当たり前だけどあの頃は今より自分のことしか考えてなくて、他の人はどう思っていたなんて、どういう視点だったかなんて、気づかなかった、思いを寄せなかった。

 バレー部の桐島はスーパーエース、才能のかたまりのような存在。いわば学校ヒエラルキーの頂点。 その桐島が突然部活を辞めたことによって学内の歯車が狂い始める。その波紋がパアァッとひろがるさまが、学生それぞれの緊張が張り詰めほころんでゆく過程が見事。もちろん桐島騒動と無関係な生徒もいるわけで、それが神木君扮する映画部の前田ですが、最終的になぜか巻き込まれる。ラストはなんじゃこりゃ!とは思いましたが、それだけで終わらないでよかった。

 何人かの生徒は、自分ではどうがんばっても越えられない「壁」というのを感じており、それがまたせつない。「持つ者」と「持たざる者」の決定的な差。 「持つ者」は決してわからない「持たざる者」の気持ち。でも一部の「持つ者」の生徒は気づいたようで、その感じ方、動揺がよかった。桐島の親友の男子が印象的。前田との会話で気づいたみたい。

 それから桐島の彼女の友達。そのビッチ具合がまたいそうでこれまたよい。トップクラスのイケメンとつきあうことによって、桐島の彼女と友達になることによって自分を高いところに置きたいっていうやつ。そういうのもクラスに必ずいた。そしてみんな演技がとても素晴らしかった。こんな学校、こんな生徒いるよね感をビシビシ感じた。

 高橋優さんの歌う主題歌もよかった。

 これぞ日本の映画。洋画では絶対に味わえない親近感。

2012年の映画。