「ふがいない僕は空を見た」 こんな映画を観た:74

人生は、自分じゃあどうにもならないこともある。

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ざっくりストーリー

 不妊に悩み、そのせいで姑に当たられる主婦。だが昼間は、コミケ(?)で出会った高校生とコスプレで情事を重ねる。その二人はその後、そのツケがまわり大ピンチに。

 そしてその母も友人もなんだかいろいろ抱えている、群像劇スタイルの映画。「百万円と苦虫女」のタナダユキ監督。

感想

 まず、前半はそのコスプレセックス主婦(ひどい言い方だ。)と高校生との情事に費やさせる。そのセックスシーンに多くの時間が割かれており、要は快楽に溺れていますよということがよく伝わってくる。「桐島」のように視点を変えながら時系列を戻して丁寧に描く。何でこんなに時間が割かれているのか考えたが、後半に回ってくるストーリーとの「落差」を表現するためなんだろう。そんだけ楽しいことをしたんだから、その後は叩きつけられるくらいの報いが待っている。な感じで。その主婦と高校生、それぞれの視点からストーリーをなぞったとも見れる。

 コミケに参加するのも、その場でコスプレするのも悪くないと思う。人の趣味はそれぞれ。だけど結果的に不倫になっているのはいかんと思う。だが一方で不妊に悩み、姑から強制的に不妊治療をさせられているツラさはある。姑と夫にすんなりあっさり気を遣われずにサンドイッチを選ばれなかったのがまたなんか気の毒で。

 そのいびる姑の追い詰め方がえげつない。夫は普通に仕事行っているようだが、何を考えているかわからん。だがその姑もきっと孫ができればいいおばあちゃんになるのだろうし、夫はがんばって仕事してるかもしれない。何が言いたいかというと人間の良い悪いはコインの裏表なのかなと。

 高校生の友人は団地(ここでは貧乏の象徴として描かれている)に認知症の祖母と二人暮らし。新聞配達とくたびれたコンビニのバイトで生計を立てている。母親はいわゆるビッチで、別の所に暮らしているらしい。本人が望んだわけではない、自分に配られたパイ(=人生)がこんなんなんてひどい理不尽。団地とかくたびれたコンビニとか、DVに遭ってる女の子とか、この友人のくだりはホントに恐ろしい。その容赦ない貧乏感が。どこかにありそうで。

 誰もが望んだ人生を過ごしているわけではないし、そんな中決めた選択だって、決して正しいとは限らない。誰にだって過ちはある。でもそんな中でも戦っていかねばならないのが人生。

 助産師である母親やその部下の女性や、コンビニバイトの先輩など個性的な面々もいっぱいいるが書ききれないくらいいろいろストーリーがある。

 映画全体として、なんとなく閉塞感が流れており、それがいやなくらいよく伝わってくる。監督の技術なのかな。そして全く希望の無い展開ではないところがよかった。

 2012年の映画。