「9 <ナイン> ~9番目の奇妙な人形~」 こんな映画を観た:19

ぐっと惹き込まれるダーク・ファンタジー

 もともと、この映画の監督、シェーン・アッカーの2005年の作品の約11分のショートフィルムだったものを、「アリス・イン・ワンダーランド」のティム・バートン監督が気に入り、プロデューサーとしてバックアップにあたり、人形たちも声を入れ、スケールを拡大し、そして映画化。
 ようつべで探して観てみたら・・・その作品、見つかりました。たったの11分なのに、サイレント映画なのに、ぐぐっと引き込まれてしまう映像美とストーリー↓

ストーリーは、人類滅亡後の世界。

 まず、一人の男が麻布を縫って、小さな人形(推定身長20センチ)を作る所から始まる。その男は人形の背中に「9」の文字を記す。

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パンフも独特の装丁で気に入ったので、買いました。「9」のおなかをめくると、発声装置が見えます。

 ・・・その人形が目を覚ますと、荒れ果てた部屋の中、その男が倒れている。窓を開けると、世界は崩壊していた。ここはどこなのか、いったい自分は何者なのか。その背中に「9」と書かれた人形が主人公。

 外に人影を見かけ、追いかけていくと、背中に「2」と書かれた仲間を見つける。同じようなぼろぼろの布で作られた人形。

 「9」は最初、声が出なかったのだが、「2」に声が出るように直して(治して?)もらう。するとそこに、謎の機械モンスターが現れ、健闘空しく「2」は連れ去られてしまう。

 そのさなか気を失ってしまった「9」。目が覚めると他のナンバーをつけた人形たちが助けてくれていた。

 「9」はその仲間を誘って「2」を助けようと機械モンスターの棲み処に赴く・・・。

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裏面は「9」の背中。こってるな~。さすがに「麻」ではなく、紙製のパンフですが。

独特のセンス。

 まず、その主人公たちの造詣が独特で、目を奪われる。麻布を縫い合わせた身体に木や金属の造型の手足。[目」がレンズのようなものでできており、瞬きするたびに「ウィン」と機械音が鳴る。その瞬く目と表情がとても豊か。そして9体それぞれに造型が異なり、個性あふれる人形たち。それぞれとてもキャラが立っていました。「つぎはぎ」感がこのダークな世界にとてもぴったり。薄汚れたつぎはぎながらもそれぞれ愛嬌のある表情にスタイル。

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パンフには「9」たちのディティールが描かれています。こういうパンフはありがたい。見てて楽しいです。

 逆に敵のロボットは不気味な感じに。ネコ型(と言っても「ドラ」的なのでなく)から、鳥型、キモチ悪かったのはアナコンダ型で手足があり、顔部分に「チャイルド・プレイ」のチャッキー的な怖い顔がついていて、おなか部分に捕まえた「9」の仲間を取りこめるモンスター。などなど、寄せ集めの「機械」でしかも有機的な外観。「いいもん」と「わるもん」の対比がわかりやすくされており、ダークなセンス満点です。

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写真の左がそのアナコンダ的機械モンスター。キモこわい。

 舞台はおそらく、ヨーロッパの第二次世界大戦前後をイメージしているよう。劇中に、戦場で死んでるもちらっと出てきて、どきっとさせられ、緊迫感が漂う。「9」がトーチ代わりに使う電球のソケットがエジソン型でなくスワン型なのがヨーロッパ的。

 どうして人間たちはいなくなってしまったのか、なぜ9体の人形たちは生まれたのか、そしてなぜ機械モンスターたちは「9」たちを執拗に狙っているのか、徐々に明らかになる。その機械たち、人形に「命」を吹き込むシステムがこの映画のカギ。

 そしてアクションもすばらしい。アクションと言ってもハデな立ち回り、そのアイデアも巧みだが、「9」たちのちょっとしたしぐさもとてもよい。機械モンスターたちは大柄でしかもメッチャ強い。「9」たちはどうみてもかなわないのだが、みんなで力を合わせて戦うその様がケナゲ。

  つかの間、「オーバー・ザ・レインボー」が劇中に流れ、ゆったりとした時間が流れ、またすぐさまクライマックスに向けて物語は走り出す。ラストもハッピーエンディングとは必ずしも言い切れない切ない流れに。

 80分と、長編映画としては短めながら、よくある120分映画と同じようにストーリーが造られている。まったく短さ、物足りなさは感じません。

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それぞれのキャラの説明もちゃんとあります。

声優陣も豪華。

9:イライジャ・ウッドロード・オブ・ザ・リング
1:クリストファー・プラマーサウンド・オブ・ミュージックカールじいさんの空飛ぶ家のカールじいさんの声)
7:ジェニファー・コネリービューティフル・マインド
6:クリスピン・グローバーバック・トゥ・ザ・フューチャーアリス・イン・ワンダーランド
 
 自分が知ってるのはこれくらいですが、その他の声優も実力者揃い。人形たちに命を吹き込んでくれます。

 原題は「9」。ここ直近で、ミュージカル映画「NINE」や、自分も観た「第9地区」など、なんでか9かぶりなので、この「<ナイン> ~9番目の奇妙な人形~」という邦題はやってよかったと思う。

 公開スクリーンがあまり多くないのは残念。

2010年の映画。