アートの冬2011 Vol.2 イサム・ノグチ庭園美術館

 四国旅行で、何年も前から行きたかった、香川県高松市牟礼のイサム・ノグチ庭園美術館へ。ここは、彫刻家のイサム・ノグチが晩年、1988年まで約20年間、制作活動していたアトリエと、住んでいた家などを当時のまま紹介する美術館。

 この美術館は事前申し込み制で、さらに週3で一日に三回しか見学できず、一回あたり一時間の見学コース。人数制限もあり、入館料が2100円と、なかなかハードルは高いです。

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これは受付蔵。

 自分は5年くらい前に、東京での展覧会でイサムノグチの作品に触れ、そしてこの場所を知り、いつか訪れたいと思っていました。関東住まいの自分が牟礼まで足を延ばすのは簡単なようでなかなか難しく、今回たまたま他の用事も見つかり、訪れた次第です。だから受付を済ましただけでまず感無量。生きてるうちに行ってみたいおきたい所がひとつ、達成できました(T_T)(←おおげさ)

 見学はガイドさん付きで、一組30人くらいの人数制限がありますが、この日は連休ということもあり、倍の人数で2チームに分けての見学だそう。ハードルの高い美術館なので、人気はどうなの?と思いましたが、心配は無用のようですね。若者から年配の方まで、まさに老若男女、さまざまでした。若者も結構おりました。若者がイサムノグチに興味があるなんて…なかなかヤルな( ̄∇ ̄)(←なぜか上目線(^-^;))

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受付兼待合室。イサム・ノグチの作品や本も売っています。

 で見学はガイドさん付きですがギャラリートーク的なものはなく、入り口でひととおり説明が終わった後、各人勝手に見て回ってよいというシステム。めいめいに作品を眺めながら、物思いに耽ったり感心したり。

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こっちはアトリエ。園内は撮影禁止なので、ポストカードから。

 アトリエ=屋外展示場の方は、イサムたちが作った石壁に囲まれた敷地です。完成、未完成問わず並べられた作品たちを見たり、蔵を移築した屋内の作業蔵や展示室的な場所を見たりできる。当時のそのままなので、作品名が書いてありわけでもなく。

 作業蔵では実際に使っていた道具、ノミやハンマー、サンダーやディスクグラインダなとが並んでいる。まるで、昨日まで作業を行っていたかのように。

 ここで見られる作品は全て「石」でできています。近くに質のいい石が採れるようで、それでイサムはこの地を選んだそうです。

 私は石を削ったり磨いたりしたことは無いけれど、相当な力作業でしかも、根性がないとだめだろうというのは推測される。イサムノグチ本人は、80歳を過ぎた晩年まで作業をしていたそうで、やっぱ事を成す人間は、パワーが凄いんだなぁと感心。普通、60を過ぎた人間がまた新たに事を成そうとは思わないですよたぶん。

 展示蔵の方にも、いくつかの作品が展示されており、以前東京の美術館で展示されていた、今回一番会いたかった「エナジーヴォイド」と再びご対面。やった~♪

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ポストカードより。実物はメッチャデカイです。

 薄暗い屋内で静かに佇む高さ3.7メートルの「エナジーヴォイド」。このねじれた異様なフォルムがよい。何かを発しているような、この「輪」の中に取り込まれるような。

 なぜか、この作品は男子に人気があるようで、私を含めたオッサン4人が、無言で等間隔で作品を囲み、しばらく眺めていました(笑)

 その他、「真夜中の太陽」などが展示されており、じっくり観るにはちと時間不足ですが…まあしょうがないでしょう。もっと観ていたかったなぁ~(-_-)***

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これが真夜中の太陽。直径は2Mほど。

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 そしてイサムノグチが住んでいた「イサム家(や)」と彫刻庭園ゾーンへ団体は移動。

 「イサム家」に実際にはイサムは冬以外に住んでいて、冬はニューヨークに戻っていたよう。ニューヨークの方が寒い気もしますが、これまた古い建物を移築したようで、窓ガラスがないからというのも理由のひとつだそうです。

家の中は立ち入り禁止ですが、外から覗く感じでの見学はできました。

 そして、彫刻庭園はイサムの母との思い出を残した作りになっており、母、レオニー・ギルモアの故郷にも植わっていたユーカリの木も植えられていました。

 そして小高い丘を登ると、近所の山々から瀬戸内海まで一望できます。いわゆる借景です。(風景ごと作品として取り入れる方法…最近学んだ用語。)この景色がスンバラシイ(T_T)写真がNGなのが残念。

 この日の前日は、この辺では25年ぶりの降雪(積雪?)だったそうで、この日もその余波が続いており、雪から吹雪、みぞれに雨、そして晴天とめまぐるしく天候が変わる中観ることができ、非常に貴重な経験をすることができました。

 平日はどのくらいの客の入りかはわかりませんが、今のスタイルは壊さずに、末永く存続してもらいたいです。そして少しでもその美術館の存続の足しになるなら。と思いながら、ガイドブックを買いました。家に帰って眺めているだけで、またあの空間にワープできます。あと、ポストカードも買いました。

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デカイです。キシン・シノヤマ氏撮影。

 訪れてからだいぶ経ちますが、その時の気候までまるごと記憶に残っているのが、屋外美術館の良さかも知れません。周りの風景ごと、全てをとりこんだアート。

 イサム・ノグチの作品は、時代を超越して、心に何かを訴えかけます。観念的過ぎて、自分にはどう表現すればいいかわかりませんが、考えるというより、感じるものなのかも知れません。(なんだかブルース・リーみたいだ。)

 ガイドさんにいろいろ質問すればよかったんですが、自分はシャイボーイなので(自分で言うな)、何も聞けなかった…というか、聞いてどうかなるもんなのかと思いながら、石から、敷地全体から発するエネルギーをただひたすら浴びていました。

 またいつか、訪れたいです。

おわり。

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