「127時間」  こんな映画を観た:30

 なにかを手に入れるためには、今、手に持っているものを手放さなければいけない。

 そんな映画です。

 (この場合の「もの」は本当の「もの」でもあり、メタファー的な「もの」とも言えます。) 

 史実の映画化。主人公:アーロンはアウトドア大好き青年。渓谷を一人でトレッキング中、岩の隙間に落下し、身体は無事だったが、右腕を大岩に挟まれ、身動きがとれなくなる。 アーロンは普段行き先を誰にも告げずに旅立ってしまい、しかも誰もこないような辺境に旅立つ。だから助けの呼びようもないし、やってくる可能性も非常に薄い。

 ていうことはその挟まれた右腕をどうするのか。この葛藤がこの映画の全て。そうなると映画としての結論はもうわかりきっている。アーロンのワンショット以外やりようのないシチュエーションなので、画面的にはどう観客に魅せるのか、そこを映画化してしまう監督をはじめとするスタッフの技術の魅せ所。

 その限られたシチュエーションでの展開が見事。音響もうまく使っている。永遠とも思える時間の中、アーロンの心の中ではきっとああいう音が鳴り響いていたんだと思うし、あんな映像が浮かんだと思う。あれが史実というのが・・・現実は残酷だ。

 大岩に挟まれてから、いろいろアーロンが考えている場面が出てくるが、死に直面している人の心境は日本人の私たちといっしょなんだな~と思う。

 そして余談だが、いくつかのメイド・イン・ジャパンの製品が出てきていた。あのソニーサイバーショットは当時としてはインパクトのあったデザインだった。最初から最後まで活躍してくれたのは日本人としてちょっとうれしい。ヘンな所でメイド・イン・ジャパン製品のアッピールができた。

 決してアーロンのこれまでの行動は誉められたことではないので、その辺納得いかないが、でもそれは原作の話だと自分に納得させる。

 自分的には感動というよりは、ショックが大きい。ショックが強すぎて、他の部分がぼやけてしまった。でも何かを乗り越えようとする時の人間の強さ。それを感じた。その「覚悟」が自分にはできるのか。

 帰り道、また翌日になっても何度も自分の右腕を見てしまった。

2011年の映画。