クモがニガテな人は読まないでくださいな話。

 蜘蛛の巣の話。

 職場の近くのいつも通る場所の軒先に蜘蛛の巣が張っている。

 通るのにジャマならとってしまうがとりたててジャマでもないので、すぐにいなくなるだろうと放っておいたら、よっぽど住み心地がいいらしく数週間前からずっと同じ場所にいらっしゃる。

 先日、仕事も終わりかけた夜に通りかかったら、ちょうど巣を張り直しているところだった。あまり蜘蛛が巣を張っている場面に出くわすこともないので、なんとなく見てみた。彼(もしくは彼女)はちょうど張り直し始めているところだった。たまに張り直しているのかどうかは知らない。

 誰に教わったわけでもないのにあれだけのスピードで、直径30センチはあるだろう巣をぐるぐると回りながら外側から内側へ、結構なスピードで…内側からじゃないのか…均一な間隔で巣を作っていった。

 完成まで眺めていようかと思ったが、さすがにそんな暇はないので職場に行き、30分後に戻ってみたらもう完成していた。すごいスピードだ。

 そのクモ太郎(仮名)は無事完成して疲れたのか、早速エサがひっかかるのを待っているのか、巣の中央でじっとしていた。心なしか満足気だ。それがクモ太郎の生まれ持った能力とはいえ、見事に出来上がったもんだなぁ〜としばし眺めていた。クモ太郎もがんばっているんだから、人間のオレもがんばろう。と思った。ほんの少しだけど。

 自分がその人間の力を誇示して、オリャーと巣を壊してしまうこともできるが、私は虫にいじわるして心が満たされるほど心は荒んでないので、その場を立ち去った。

 だから自分が地獄に落ちても、きっとお釈迦様が見ていて、クモ太郎の糸を極楽から私の目の前に落としてくれるだろうと信じている。(オサム・ダザイ的に)

 そんな虫の神秘をみたあとに、姑息なことを思った夜。

 おわり。