向田邦子 「父の詫び状」  から派生する、遠い記憶

 先日、向田邦子のエッセイ「父の詫び状」を読んでいたら、著者と父親の会話で、玄関で草履を並べるルールの話で、女は靴をくっつけて、男は少し離して、というくだりがあった。

 この話、高校ん時に国語の授業でその国語の先生も言ってたな。と昔の記憶がよみがえり、一般的にはこういうもんなのかな?と思いながら読み進めていた。

 そして、著者の母親が玄関先で、客の吐いた吐瀉物を掃除していたというくだりが出てきて、これまた聞いたことあるな…と思ったところではたと気がつく。そうか。その時の教科書は「父の詫び状」を教材に使っていたのかと。(草履のくだりで気づけよ)

 今となっては調べようもないが、絶対にそうだ。10年どころか20年に近い昔のことをよく覚えていたもんだと自分に感心。その時は電車に乗っていたので、声を上げることはしなかったが、はたから見ると、自分はかなり目をまるくしていたに違いない。覚えていた理由のひとつとして、担任の国語の先生が私と同じ名字だったというのもあるかもしれない。当時のその授業の他の記憶は全くないのにそれだけ憶えている。たまたま向田作品を読んでみようと思った今の自分がつながる。不思議なもんだ。

 そんな遠い記憶を呼び起こされた話。

おわり。