アートの冬2011 「松井冬子展 ー世界中の子と友達になれるー」 in 横浜美術館

 松井冬子さんは現代を代表する日本画家(になれるであろうお方)。たまたま横浜へ行く機会があり、ついでと言ってはナンですがなにか美術展やってないかな〜と調べてみたら、この展覧会がやっていたので行ってみました。

 正直申しまして、松井冬子さんのお名前は存じあげませんでした。しかしこのかたの作品(とご本人の美貌)に衝撃を受け(誰?主に後者の方だろと思ってる人は??)、本来の目的の場所のすぐ近くだったので足を運んでみました。

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 場所は横浜美術館。みなとみらい地区、ランドマークプラザのすぐ裏です。

 松井冬子さんは気鋭の日本画家。日本画と言っても風景画や人物画というよりは、かなりホラーチックな画を書くかたです。って書くと誤解を与えそうですので、おいおいちゃんと説明していきます。

 今回の展示は、いくつかのテーマに分かれ、100点近く展示してありました。まだ若手の画家さんのせいか、下絵や写生なのどの習作も結構ありました。

 あまり手持ちの資料が無いので写真があまりないのですが、展覧会のテーマ「世界中の子と友達になれる」という作品はポスターにもなっているこちらです↓iphoneの美術展アプリより。白い丸は私のiPhone固有のものですので絵とは関係ありません。

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 一見すると、藤の花の森に少女が佇み、どこかを覗いているように見えます。何とも和風メルヘンなシックな画かなと思ったのですが、よ〜く見ると(この画像ではわかりませんが)藤の花には無数の蜂がびっしりと停まっており、右には赤ちゃんのいないゆりかごが何かを暗示しているように。少女の足は血だらけと、一見正常に見えて「狂気」な作品です。これが冬子さんの代表作のひとつだそうです。

 世界中のこどもたちと友達になれる…子どもの頃に考えたことある人なんてのもいるかと思いますが、実際のところ、そんなことは絶対にできないわけで、でも今も自分たちは普通に過ごしている。そんな矛盾を表した作品だそうです。「狂気」のイデア…つまり狂気を冬子さん風に形にするとこんな感じ…と言えばいいのか…難しい。でも何だか悲しい、そして美しい作品。近くで見たり、少し離れて見たり、目の前のソファーに座って眺めたりしてました。何だか見てるうちに背筋がゾクゾクしてきました。だんだんこの作品のパワーを感じてきたというか何というか。

 その次のゾーンではこの作品の下絵やデッサンが展示されておりました。藤の花のデッサンや蜂のデッサン、そして構図はこうしようという細かく書き込みがあるレイアウト図とか。画家という職業の人が絵を描く時に、勢いで、もしくは既に頭の中にあるものを具現化するものとばかり思っていましたが(なかにはそういう人もいるんでしょうけど)、綿密な作業を繰り返し、試行錯誤を繰り返してこの作品が出来上がるという、例えばアート作品じゃなく工業製品だって同じように綿密な作業を繰り返し、試行錯誤を繰り返してこそ良い作品、商品ができるはず。そういう意味ではアートも非アートな商品も一緒なのかなとも思います。

 以前から自分は下絵は展覧会に展示される作品としての価値はあるの?という妄言を吐いていましたが、その作品の「過程」がよくわかるのでとても勉強になります。申し訳ありません。

 何と言うか、この作品とその下絵を交互にずっと見ていたら、なんとなく道がパアっと開けたというか、目からウロコがフォーリン・ダウンというか、ああ来てよかったな~と思いました。作品の伝えたいことはまだうまく感じとれませんが、冬子さんのパワーを感じて自分もレベルが上がったというか・・・ほんの数ミリですけど。

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 その他の作品、例えば内蔵が結構どころかかなりあらわになってる作品、エグイ作品が多いんですけど、冬子さんの解釈だと、内臓は人間動物なら誰でも持っているわけで、グロさがどうのこうのというわけでもないし、特別なもんでもないそうです。(と誰かのインタビューのうろ覚え)

 自分的に気に入ったのは先の「世界中の子と友達になれる」や「ただちに穏やかになって眠りにおち」・・・とかかな?それにしてもタイトルが独特、例えば「優しくされているという証拠をなるべく長時間にわたって要求する」とか、「この疾患を治癒させるために破壊する」とか独特のセンス。

 いくつかの作品で、この作品はこういうことを表現しています・・・という解説があったが、アートとして、そんな解説必要なくても理解できるような作品でなくちゃだめなのか、場合によっては解説も必要なのかはわからない。でないと冬子さんの思惑とは別に「ホラー好きなな人、エグイ画が好きな人」の人気も集めそうな気が・・・。まあ、画家にもセルアウトなタイプとハードコアなタイプな人がいるんでしょうたぶん。たまたまこの日はギャラリートークがあったが、時間が合わずだった。ぜひ解説を聞いてみたかった。

 正直申しまして、今の私の美術知識レベル、鑑賞レベル、人間力レベルでは松井冬子さんの作品をちゃんと理解するまでに到達できてない感じです。自分がまだダメなんです。ほんとスンマセン。

 館内を1時間以上観て、その次の予定があったので、最後にもう一度「世界中の子…」を観てからその場を後にしました。もうちょっと観てたかったな〜。

 それにしても自分が今まで美術館で見たことある画家のほとんどは、すでに亡くなられてる方ばかり。松井冬子さんは「今」の画家さんなので、これから数十年は新たな作品が見られるという、今までにない感覚です。来世紀以降も必ず残ってゆくであろう作品、作家。そういう意味ではとても今後が楽しみです。また観てみたいです。それまでに自分のレベルが上がってるといいな。上げないとな。

松井冬子さんのHPはこちら

http://matsuifuyuko.com/

展覧会のHPはこちら

http://www.yaf.or.jp/yma/jiu/2011/matsuifuyuko/index.html

 

 おわり。