「マネーボール」 こんな映画を観た:42

 ビリー・ビーンという、実在する一人のGM、元野球選手の葛藤を描いた映画。

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 スポーツ映画ではあるんだけど、その過程がビジネスマンの映画とも観ることができてとても興味深かった。

 ビーン(って書くとMr.ビーンみたいだ…)はオークランド・アスレチックスGMで元メジャーリーガー。選手時代はあまりいい成績を残せなかった。映画は2001年のシーズン終わりから始まる。ジオンビー、デーモン、イズリングハウゼンという主力選手3人を放出したA's。その選手たちが抜けた穴を埋めるには、金のないA'sではそう簡単にはいかない。そこで、今までの常識を打ち破るような理論「マネーボール理論」でチームを立て直すことに。

 前半の場面はその新しい理論を元に選手集めを推し進めようとするビーンと、古い考えに固執するスタッフたちとのやりとり。金持ち球団と同じことやってたって勝てるわけないと。それは確かにまっとうな意見。古株のスタッフたちとビーンたちの対比(古株たちが年寄り集団なのに対し、ビーンたちは若手)もわかりやすい。ある種ベタな対比というか。

 その理論を元に集めた選手たちと共に2002年のシーズンはスタートするが、監督はそのビーンが雇った選手を使わず、チームは低迷。そこでビーンはトレードでその選手たちを放出し、自分が雇った選手を使うよう画策。そこから奇跡の快進撃が始まる。

 ・・・って書くとまるでフィクションのようだけど、これがノンフィクションの話なのがすごい。日本の野球と違って、GMの権力は強く、トレードもバンバン行われるのが日本の野球ファンからすると驚くのではないだろうか。自分はあんまり野球に興味ないので気にならなかったが。

ポストシーズンを目指すA'sとのシーンと、
・ビーンの娘とのやりとりのシーンと、
・過去のシーン:ビーンの若い頃、スカウトが家に来た時や選手時代にあまりいい思い出がなかった頃

 の3つの流れが入れ替わり出てきて、ビーンがどういう気持ちでこの理論を実践しようとしているかがよくわかる。特にビーンの娘がアコギで奏でる曲、それがビーンの心境をとてもよく表しており、うまい比喩手法だなと感心する。

 そしてハイライトの2002年のシーズンの奇跡の20連勝の表現も、どれだけ20連勝というのが大変で、価値のあるものなのかを過去の他のチームを引き合いに出しながら完結にまとめるのもわかりやすい。 そしてその大事な場面でのピッチャーとバッターの対峙しているシーンが乾いた感じで表現されており、また、全体の局面は実在のシーンを使ったり映画用にシーンを撮ったりしているが、それぞれが全く違和感なく合わさっている。とても見事。よくMLBも映像を提供してくれたもんだ。豪華ですよ。全て実際の球団、名前を使ってるんだから。

 結局のところ、ビーンのマネーボール理論の実践は、現在進行形である。そこがこの映画の魅力のひとつなのではと思う。 常にチャレンジし続ける男の姿がよい。そしてブラピは相変わらずカッコイイ。

2011年の映画。