「この空の花 長岡花火物語」  こんな映画を観た:65

「脳が追いつかない時、人は感動する」by 脳科学者の茂木さん(パンフレットより)

Konosora

ざっくりストーリー

 主人公の遠藤玲子(松雪さん)は18年前に別れた恋人から一通の手紙が届く。それをきっかけに長岡市を尋ねることにした玲子。

 その地に足を踏み入れたとたん、過去と現在と幻想がごちゃまぜになって流れてゆく。セミドキュメンタリーな映画。

 長岡市を軸にして原爆、太平洋戦争、中越地震、そして東日本大震災を結びつけ、有名な長岡花火大会へ向けて物語を怒涛の情報量で流し込む。

 「時をかける少女」「転校生」の巨匠、大林宣彦監督作品

感想

 こんな映画観たことありません。観られて本当によかった。大林監督は74歳。どうやったらこんな映画作れるのか。ブッ飛んでます。

 主人公たちはストーリーをなぞりながらナレーションして、と思いきやいきなり観客の我々向かって話しかけてきたり、日本語映画なのになぜか、単語、単語に日本語字幕がついたり、極端に暗かったり独特の照明の使い方をするシーンがあれば、戦中の市民をテーマにした舞台劇のシーンでは、あからさまに不恰好な炎のCGが差し込まれたり。劇中ずっと一輪車に乗っている(←ある種のメタファーであると思いますが)主人公の一人の女の子がいたりや、大団円のシーンでは字幕で「大団円」と出たり(笑)

 とは言いながらも不自然ではあるけどもちゃんとストーリーは進み、長岡の不幸な歴史をなぞってゆく。戦中は焼夷弾がたくさん落とされたり、原爆の模擬弾が落とされたり、一方、東日本大震災ではいちはやく被災者を受け入れたり・・・などなど、ものすごい量の情報が頭の中に一気に流し込まれます。まともなシーンからシームレスでファンタジーなシーンにいつのまにか移ってたりと油断できませんが。

 映画的にどの辺に着地するのか、想像できませんでしたが、終わってみると納得の終わり方。冒頭でも書きましたが、脳が追い付かないほど情報を流しこまれると、人は感動するそうで、確かにもうわけがわかんないけどラストの方ではなんだか涙が。

 一回観たくらいではわかりませんが、カオスの一歩手前でまとめる大林監督の凄さに驚きました。年内ベスト級の凄さ。

2012年の映画。