「あなたへ」 こんな映画を観た:70

世界よ、これが日本の映画だ!!!!!

Anata

ざっくりストーリー

 亡き妻の遺言により、遺骨を故郷の海へ撒くため、富山から長崎まで車で向かう男。

 その旅先でさまざまな人との心温まるやりとりが起こる話。

感想

 高倉健さんは御歳81歳!リアルタイムで健さんの演技が見られるのは正直、残り少ないだろうと思い、観てきました。失礼な話、ほとんど健さんの出ている映画は観たことありません。

 ストーリーは健さん演ずる刑務技師:倉島英二の15年連れ添った妻、洋子が亡くなり、遺言書センターのようなところから2通の遺言が送られてくるところから始まる。

 映画の大半は英二さんの回想とエルグラでの旅の話。いわゆるロードムービー。なんとなくストレイトストーリーという映画を思い出した。

 ロードムービーはどちらかというと、あっと驚くラストが待っているというよりは、その映画の(何日間にもなるその旅の過程からすると)2時間くらいの短い尺を使い、その旅の過程を積み重ねて、絶妙な「間」と「時」を重ねていって観る人に時間と想いを蓄積させ、感動を呼ばせるという手段なのかなと思うが、

 一見だらだらしてそうででもムダの無いストーリー構成がとてもよかった。合い間に妻:洋子との思い出をフラッシュバックさせ、またストーリーの本道に戻し、なんだか奇妙な出会いがあったり。

 映画冒頭での風鈴のくだりの回想シーンはセピア色で、いまどき回想シーンにセピア色を使うなんてずいぶんベタだなと思っていたら、繰り返される回想シーンには色がついてゆき、終盤の同じ風鈴のくだりの回想シーンはカラーになっていた。旅を経てちゃんと思い出は刻み込まれたのかなと。

 洋子のイキなはからいで英二に長崎まで旅をさせ、自分との思い出を回想させ、刻み込ませるという洋子の思いなのかなと感じた。だから最後の手紙の内容はとてもシンプルで、長崎に行くまでのプロセス全体が洋子への鎮魂であり供養であるのかなと。本当はあの後部座席を改造したエルグラで二人で旅をするはずだった。それを果たすよう仕向けたのかなと。

 映画としての盛り上がりは少ないけど、佐藤浩市さんとのくだりはなんでわかったの??とは思ったけど、余貴美子さんのメモをチラ見するシーンがなんとなく伏線になっていたのだろうか。それを考えると刑務官というのはすごい洞察力だ。長崎の古い写真館で誰かの写真を見つけることができたくだりもよくわからなかったけど。

 この映画はフィルム映画だそうで、なんとなくだが最近よく観るデジタル映画とはまた違った味わいがあった。終始海っぺりの風景が映されていて、その光景がすばらしかった、それから兵庫県和田山竹田城址での雲海の上での野外コンサートの会場もすごい雰囲気があった。

駄話

 健さんの81歳になるのに矍鑠(かくしゃく)(こんな漢字書けないけど、パソコン使うと書けるんだなぁ)としたふるまいはすごい。

 そして、脇役のかたたちも豪華で、健さんと共演ということできっとみんな喜んで出演したんだろうと思う。田中裕子さんはあんなに歌がうまかったのか!と思った。

 大滝秀治さんに永塚京三さんにそれからチョイ役で浅野忠信さんやナイナイの岡村さんなども出てて、無駄に豪華なキャスティング(笑)

2012年の映画。