「寄生獣」 こんな映画を観た:144

[ネタバレ注意]

シンプルにVFXはすごい。

Kisei10

 ある日突然、謎の寄生生物が日本に現れる。主人公のシンイチは本来頭を乗っ取られるところを、右手に寄生され、その寄生生物「ミギー」と奇妙な共同生活を送ることになる。

 1990年代に発表された名作コミックの実写映画化。山崎貴監督作品。

感想

 私は原作コミックは全巻持っていて何度も読んでいるので、そういう目線での感想です。

 原作が未だに読み継がれる名作である所以は、よくあるホラー作品ではなく、ホラー要素もありながらも、ミギーを始めとする寄生獣たちのドライな目線からの、人間の生物としての立ち位置や、考え方などの奥深さだと言えます。だからそこをうまく伝えてくれないと、単なるVFXのすごいホラー作品になってしまうのですが。どうなることやら。

 で観た感想ですが、なんとなくもやもやしながらも、うまく映画したなあと思いました。田宮玲子とミギーの視点で、肝心な人間に対する推察がうまくおこなわれている感じ。

 ストーリーは、うまいこと原作を入れ替え2時間にまとめたなと。あっちをこっちにくっつけ、こっちをあそこに組み込む。組み替えたストーリーを整えるのは原作を知り尽くしてなおかつ技術がいるだろう。

 VFXは、よくぞここまで日本映画でやってくれたなと思う。人間の頭部がパカっと割れ、触手がビュンビュンと飛び回る様は本当に見事。ミギーの所作はパフォーマンス・キャプチャーを取り入れ、演ずる阿部サダヲさんの動きを取り入れ、とても自然に。島田を遠距離攻撃するシーンは、前半の弓道のシーンが前フリになっている。石投げでやって欲しかったけど、弓矢の方がビジュアル的にいいかな。ただ、ミギーは刃物以外の道具に化けることはない。でも原作知らない人はアクションだけでも楽しめる。

 役者さんは村野里美役の橋本愛さんは、もっとシャープなイメージがあったけど、本作はほんとにかわいらしくて、役にマッチした演技をしている。余貴美子さんは寄生前と後で役作りにだいぶ苦労したのでは。深津さんや東出君など、棒な演技もそれはそれで難しそう。

 物語をわかりやすくするために母親を乗っとったAとの対決をさせたのは劇映画として良いのではないだろうか。後半は田宮玲子のあのシーンや市庁舎での対決、後藤との対決など見どころが満載だ。

 以下、気になる点。

 ミギーは寄生生物特有のドライさが持ち味なのに、なんだかかわいい小さな生き物な感じになっていてちょっと不満。大衆受けはしやすいんだろうけどね。あと声はもっとトーンを抑え気味で、中年男性の低いトーンがよかった。アニメ版の平野さんの方が声は高いけど、ミギーの特徴を捉えていると思う。

 Aに乗っ取られた母親との戦闘シーン、最後に母親のボディがシンイチを助けることになるけれど、あれはちょっと違うのではないか。母親の愛は頭部が無くても存在し続ける的なメッセージか。乗っ取られた母親とどう戦うかの葛藤が見どころなのに。

 要因としては宇田さんとジョーが出なかったからか。寄生生物と互角に戦える人間はシンイチ&ミギーと宇田&ジョーしかいないし。だけど宇田&ジョーの造形、顎部分が寄生生物として動いてなおかつ宇田さんの頭部上半分はそのままというのははさすがにVFXは難しかったか。だからか伊豆のくだりはバッサリカットされている。

 とまあ文句もいろいろ書いてしまったけど、完結編も楽しみ。

2014年の映画。

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